
https://www.amazon.co.jp/dp/4434210904/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_yG04Db7X6NB63
東京の下町にある商店街の中、姉妹が経営する一軒の居酒屋がある。通ってくるのは町内のおなじみさんたちがほとんどで、その常連客の気配に合わせて、色々と料理を出す細やかな気配りがある。
その常連客の悩みを、1話完結でつないでいるお話。言い換えてみれば、昔のファミリードラマをそのまま本にしたようなところがある。「渡る世間に・・・」を、もう少し甘めのエピソードにしたような感じか。どの悩みもほのぼのとしたもので、あまり深刻にはならないところが救いだろう。
1話完結で進行する居酒屋の話なので、本当の主人公は「お酒」とその蘊蓄のような気がする。料理のあれこれも書いているが、それは抑え程度で、他の書評ではレシピーがパクリだなどと罵っているものもあるが、それは間違った指摘だろう。この本はレシピー本ではないし、居酒屋のお客さんのあれこれの本だから。
姉妹それぞれのロマンス的要素が、軽くスパイスを添える程度で、生臭い話にはなってこないのも良い点だ。ゆるい設定にはゆるい人間関係が似合っている。ほんわかムードの会話が、この話の持ち味だから、男と女の話が剥き出しになるとちょっと興醒めしそうだ。
この東京の下町という設定は、おそらく江東区砂町銀座だろう。駅からバスで行くほど遠い、近くに大型ショッピングセンターができた、知人の喫茶店が有名な門前町にある(これは門仲の深川不動のことだろう)などと情報を重ね合わせると、あぶり出しのように見えてくる。確かに砂町銀座を歩いてみれば、こんな居酒屋がありそうだ。
ここまでの4巻でキャラはほぼ登場したようだ。この後はキャラ達の順列組み合わせで色々と話は進むのだろうが、現在は11巻まで刊行中なので、のんびりと下町の人情話を読んでいける。姉とミステリーキャラだった「タクの父ちゃん」の関係が進行するのも、シリーズものの良いところ。楽しみなシリーズだ。