恵比寿の町にはとても長い間通っていた。今のようにすっかりおしゃれになる前の恵比寿は、山手の下町などと言われてそれなりに不便な町だった。
駅ビルができるまでは、まともな本屋もなかった。マクドナルドと吉野家もなかった東京の僻地。それが今では住みたい町ランキングで上位になるとは。

そんな恵比寿でもおしゃれ系の店は意外と少ない。イタリアンの小ぶりな店は多いので、そこは評価したいが、もう少し賑やかに呑みたいとなるとガーデンプレイスのサッポロビール直営ビアホールくらいしかない。そのサッポロビールの本拠地に乗り込んできたのが、ヨナヨナエールの公式店で、ここはそれはおしゃれなお店だった。
ヨナヨナエールは地ビールのハシリで、たまには旅先で飲むくらいだったが、今や世の中すっかりクラフトビールブームで、「生」「ドラフト」が飲めるとはありがたい時代になったものだ。そして、ヨナヨナエールを飲みながらいただくのが、ダッチオーブンで炊き上げたご飯。ダッチオーブンといっても鋳物の鉄鍋に変わりはないので、単純にいえば鉄鍋ご飯だが、これは土鍋とは違ったうまさだ。気分的にはパエリアと炊き込みご飯の中間くらい。米の飯が料理に変わり、ビールによく会うのは驚きだったが、鮨食いながら日本酒飲むのと同じことだ。しみじみ旨いと思う。世の中、ノンカーボと言われる中、炭水化物でアルコールというのは、全く逆風だが、美味いものはうまいな。

恵比寿はサッポロビールというかエビスビール発祥の地。そもそも恵比寿という地名はエビスビール工場があるから着いた名前で、地名がビールの名前になったわけではない。その恵比寿の地にあるアトレ(駅ビル)レストラン街に銀座ライオンがある。この店、ビールもうまいがランチもうまい。サラリーマンの昼食ラッシュが終わったあたりを見計らい、ランチしながらビールを飲む。これは小さな悪徳だが、それはそれは楽しい。
昼時にちびちびやるには黒ビール、スタウトがよろしい。

ランチセットを頼むと、サラダがついてくるが、この程度の野菜をビールのあてにするのは正しいと思う。昼下がりのビールで、罪悪感を感じながらのビール、まさに背徳の極みだ。

そして一杯だけでやめておこうと思ったビールだが、ついおかわりをしてしまうのは、この日のランチがビーフカツだったせい。あっさり目のデミグラ風ソースがかかったアツアツのビフカツをハフハフ言いながら口に入れ、冷たいエビスビールで流し込む。まさに恵比寿の昼はこうしてプチ・ゴージャスに過ごすのがよろしいかと。
新宿や渋谷などの超繁華街では味わえない静かな昼下がり。ありがたいことだね。