書評・映像評

機動戦士ガンダム サンダーボルト

スピンオフ作品というべきか、新解釈というべきか

機動戦士ガンダム サンダーボルト 表紙 by Amazon
ちょっと見づらいが「ザクタンク」

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機動戦士ガンダム サンダーボルト  救いのない物語

日本のアニメ界で、ヒット作の続編を作ることは、ままある。いわゆるパート2作成後のシリーズ化として、宇宙戦艦ヤマトの続編が作られたあたりから、柳の下のドジョウを何匹か吊り上げる策は定石となった。
ウルトラマンや仮面ライダーのように、主人公とメインキャラを変えながら延々と続くケースや「サザエさん」「ドラえもん」のように時間の流れが止まったままの永遠劇が続くパターンもある。
アメリカ映画であれば、Xメンやアベンジャーズのコミック実写化シリーズも似たような形であるが、ウルトラマン的な同一世界の流れの中で共通キャラが出入りしているという感じだろう。

しかし、圧倒的な支持で本編の周りに枝編が増殖して、いわゆる「サーガ」になっているものといえばスターウォーズに尽きる。本、コミック、アニメ、ゲームを含めメディアミックスを多様に活用するお化けコンテンツだ。ルーカスが作った世界を、周りが寄ってたかって広げてしまい本編以外の世界の方が精緻になってしまった感がある。
これに対抗しうる広がりを持った日本製コンテンツと言えば、機動戦士ガンダムになるだろう。1979年初放映以来、延々とその続編、枝編が作られ、スピンアウト作品も多数ある。ただ、面白いのがガンダム世界は映像とゲームでは拡散したが、「本」としては広がりを見せなかった。ここがスターウォーズシリーズとの違いだろう。
原因はおそらくガンダムの原作を描いた巨匠?のせいなのだが、「本」では広がらなかった世界を描き続けるアニメーターたちが、映像世界ではますます広げているのだ。ガンダム初放映の年に生まれた赤ん坊が、今や40歳になる。彼らが今のガンダムクリエイターとなっている。リアルタイムでガンダムを見た世代はすっかりじじいになってしまった。

ガンダムの裏側のエピソード 太田垣ガンダム世界とは

そんなじじい(失礼)ガンダムクリエイターの一人が太田垣康男氏だ。1967年生まれということはガンダムを小学校から中学校にかけてリアルタイムで見た、最初のガンプラ世代ということだろう。とてもとてもガンダムが好きで、そのままじじいになってしまったのだなと思う。だから、彼の描くガンダムストーリーは、宇宙世紀0079から始まる一年戦争とその後の時期の話だ。そして物語の中では、戦争の後始末をするための実験機同士の、いわば局地戦になる。本編世界では既に一年戦争の後の内乱期が動き始めている頃だから、やはり地域紛争の一戦闘でしかない。そこに登場する敵味方のキャラは、どいつもこいつも過去のしがらみを解消できないままの劣等生ばかり。明るい話には到底なりそうもないし、実際に暗いままだ。それでも引きつけられる物語となるのは、正義の味方が登場しないことだろう。
ガンダムの本編では、主人公アムロが所属する地球連邦軍サイドが正義とは描かれてはいない。それどころか戦争相手のジオン軍に属するシャアの方が、因縁を抱えて復讐を遂げるべく暗躍するという、ダブル主人公的な物語であった。正も邪もどちらにもない、ただ戦争という状況の中で壊れていく人間を描き続けるという、ある意味で青少年向けアニメの勧善懲悪的お約束を最初から守らない問題作でもあった。

この太田垣作品も、本編と同様に救いのない人間関係、地球連邦が戦争の裏側で行なった非人道的実験を隠蔽するための作戦を描いている。戦争終結後も戦い続ける「敗戦国ジオンの残党」対「悪事を働いた地球連邦軍」との意義なき戦闘。どちらが勝っても、何か良いことが起きるわけでもない戦闘。救いのない物語だ。
すでに14巻まで話が進んでいるが、おそらく完結までは最低5巻ほどが必要だろう。連邦軍のガンダム乗りは重大なトラウマを背負ってしまい、当面は再起不能だろうし、反乱軍も大きなダメージを受けて動きが取れない状態だ。その辺りの紆余曲折をうけて、また話は宇宙で進むことになるのではと思うが、ラストシーンは機動戦士ガンダム最終話のようになるのではないか。いや、それを描きたくて太田ガンダムは続けているのではないかと想像している。

あの頭部を失いながら天頂を撃つガンダムの姿は、ファーストガンダムの中で屈指の名場面だと思う。太田垣ガンダムでも、あそこを描きたいのだろうなあと推測している。ただし、今回は宇宙を撃つのはガンダムではなくザクだろうけれど。

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